減酒(節酒)外来

 お酒を控えなければ、あるいは止めなければ、と考えている方は、男女問わず多いはずです。完全にお酒を止めてしまう(断酒)ことができれば一番良いのですが、ついつい少しだけと思って飲み始めると、結局はいつもと同じくらいの量を飲んでしまっている。その繰り返しかもしれません。

 これは脳内のオピオイド受容体をアルコールが刺激し、幸せな気分をもたらすからなのです。

 2019年3月にアルコール依存症に対する我が国初の減酒薬(飲酒量低減薬)であるナルメフェン(商品名セリンクロ)が発売されました。

 このくすりは毎日服薬する必要がなく、大量飲酒してしまう危険性のある日などに、飲酒の1~2時間前に頓服する薬です。そのため患者さんのニーズに合わせて柔軟に使用することが可能です。もちろん毎日服薬することも可能です。

 当院で行う節酒(減酒)外来は、患者さんと一緒に減酒目標の設定をし、飲酒状況の記録、定期的な外来受診と報告、そして医師からの定期的なアドバイスなどを行っていく認知行動療法です。必要に応じて、使用が適切であると判断された場合に、上記で触れたナルメフェン(商品名セリンクロ)を処方いたします。あくまでも対象は、お酒を減らしたいと思っている方です。※過去にアルコール依存症と診断されている方は対象外です。アルコール依存症の方は断酒が必要です

 ただし、わたしはアルコール依存症の専門家ではありませんので、中等度以上のアルコール依存症の方、節酒(減酒)効果の得られない方、断酒が適切と判断し場合には、専門病院、専門医をご紹介いたしますので、そこは何卒ご了解していただいた上で、ご来院下さい。

【料金】

  該当すれば保険診療となります、診察料と薬剤費が原則としてかかります。

節酒薬比較表

どうしてお酒(アルコール(エタノール))を飲みすぎると良くないのでしょうか?

 アルコール(エタノール)は肝臓にあるアルコール脱水素酵素(ADH)によりアセトアルデヒドという毒性の強い物質に変換されます。この物質は頭痛や吐き気、動悸などの症状を引き起こします。さらにこのアセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)という酵素により、最終的に酢酸に分解されます。ところがこのALDHの酵素活性が低いとアセトアルデヒドが体内にたまって苦しい思いをします。日本人の約1割はALDHがまったく機能せず、ビール1杯でも気持ち悪くなります。約3割は程度の差こそありますが、多少は飲むことができます。訓練(毎日飲む)すれば、ALDHの酵素活性も上がり酒量も増えます。しかし、もともとALDHの機能は低いので、アセトアルデヒドがたまりやすく、肝臓に障害を受けやすいと言えます。

 では大酒家(お酒が強いと言われる人)はどうかというと、アルコール脱水素酵素(ADH)が酩酊濃度になってからようやく活性化するので、それまでに多量のアルコールを摂取してしまい、結果的にはアセトアルデヒドの増加を引き起こし、やはり肝障害の原因となります。いずれにしろ、許容範囲を超えたアルコールの摂取は望ましくありません。

 アルコール摂取の許容量ですが、男性では25gと言われています。女性はその6割程度です。例えば、アルコール度数5%のビール500㎖を飲むとします。アルコールの摂取量は、500㎖×0.05=25gとなります。ですから、男性の場合の許容量は、ビールなら500㎖缶1本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯という事になります。

 アルコールは肝臓ばかりではなく、飲みすぎると脳出血やクモ膜下出血の頻度が増加すると言われています。その他、多くの健康を害することは言うまでもありません。自分の意志ではなかなか減酒(節酒)できないという方は、減酒(節酒)外来という選択肢もありますので、ぜひご検討ください。